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建設アスベスト訴訟について

労働問題

昨日(2020年10月22日)、建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込んで健康被害を受けた元建設労働者や遺族が国や建材メーカーに損害賠償を求めている建設アスベスト訴訟で、最高裁判所第一小法廷が弁論を開きました。

(イラストは勝訴になっていますが、最高裁の判決が出たわけではありません。念のため。)

同じように元建設労働者が国や建材メーカーを訴えている裁判は各地の裁判所で行われています。
すでに、東京高等裁判所、大阪高等裁判所、福岡高等裁判所では判決が出ています。
ただし、その判断内容が少しずつ異なっているのです。
そこで、最高裁判所が統一的な判断をするために、当事者の意見を聴く弁論を開いたということになります。

私も現在、元建設労働者の遺族からの依頼で、静岡地裁で国を相手とする損害賠償請求訴訟を担当しています。
提訴してから4年争ってきましたが、最高裁判所の判断が出ればほぼ決着がつくため、非常に注目しています。

アスベストとは、クリソタイル(白石綿)、クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)などの6種類の鉱物のうち、顕微鏡レベルで長さと幅の比(アスペクト比)が3以上の繊維状珪酸塩鉱物の総称をいいます。

アスベストには、耐熱性、絶縁性、耐腐食性、耐摩耗性などの物質特性があります。
しかも安価であったことから、日本国内では約3000種類以上の製品に使われていました。
一番多いのは建材ですが、摩耗材、ジョイントシートなどにも使用されていました。

アスベストには粉砕されると縦に裂け、次々と細い繊維になるという性質があります。
クリソタイルの繊維の直径は0.02~0.04マイクロメートルと、毛髪の5000分の1程度の太さしかありません。

目に見えない細かさのアスベストの粉じんを吸い込むと、呼吸器系に重大な疾病をもたらすことが知られています。
石綿肺、肺がん、中皮腫、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚の5つが代表的な疾病です。

アスベストがやっかいなのは、粉じんを吸い込んでも、すぐに疾病を発病するわけではないことです。
吸い込んでから数十年、中皮腫の場合には平均約40年経ってから発病するといわれています。

建設アスベスト訴訟の原告となっているのは、多くが石綿肺、肺がん、中皮腫を患って闘病中の元建設労働者、あるいは亡くなった方の遺族です。
この方たちがアスベスト紛じんを吸い込んだのは少なくとも30~40年以上前の話です。
しかも、建設労働者は、色々な建設現場で働くことが多く、いつ、どの現場でアスベストを吸い込んだのかは厳密には分かりません。
また、当時働いていた会社自体がなくなっている場合もあります。
さらに、建設労働者の中には原則として労災の対象とならない「一人親方」も多かったのです。

そのため、中皮腫などの病気にかかった元建設労働者の方たちが、2012年までアスベスト含有製品の全面使用禁止をしなかった国や、建材メーカを相手取って損害賠償請求訴訟を起こしたのが一連の裁判です。

最高裁での主な争点は、
1 国がアスベスト建材の使用を中止させるなどの規制権限をいつの時点で行使すべきであったのか
2 建材メーカーにも責任があるか
3 一人親方も救済されるべきか
とされており、判断内容自体が非常に注目されます。

石綿工場で働いていた元労働者が起こした泉南アスベスト訴訟では、2014年10月9日に最高裁判決が出た後、政治的な解決が図られており、一定の条件で給付金が支給されることになっています。
今回の建設労働者の訴訟についても、同じような政治的解決が図られるのではないかとも言われていますが、コロナ禍で国の財政が厳しくなる中、同水準となるのかも注目されています。

すでに、この給付金を目当てにしたと思われる、大量宣伝法律事務所の広告も目立っています。
同じように国から給付金が支給されるB型肝炎訴訟などでも同じようなことになっています。
数をこなすことよりも、辛い思いをしている被害者ひとりひとりの気持ちに少しでも寄り添った活動をすることが弁護士には求められるのではないかと思います(個人の感想です。)。

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