法律事務所なのに競馬ネタの比率が高くなってきましたが、今回もまた一つ競馬に絡んだお話を。
競馬には、日本中央競馬会が主催する中央競馬と、都道府県又は指定市町村が行う地方競馬の二種類があります(競馬法1条の2第6項)。
日本中央競馬会と都道府県、指定市町村以外の者が、勝ち馬投票券(=馬券)を発売して競馬を行うと、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処されます(競馬法30条1号)。
脱法行為も厳しく禁じられています(競馬法27条)。
どんなにお金をもっている人でも、日本国内では私人が競馬を運営することは厳しく禁じられているのです。
競馬が「公営ギャンブル」と呼ばれるゆえんです。
この点が私人が運営している「パチンコ」や昨今話題となっている「カジノ」とは決定的に異なるところです。
また、競馬法1条は
この法律は、馬の改良増殖その他畜産の振興に寄与するとともに、地方財政の改善を図るために行う競馬に関し規定するものとする。
と定めており、競馬には馬の改良増殖や地方財政の改善を図るという公益目的があるのです。
ちなみに競艇を律するモーターボート競走法、競輪を律する自転車競技法、オートレースを律する小型自動車競走法にも、関連産業の振興と地方財政の改善を図るという公益目的が記されています。
この点も「パチンコ」や「カジノ」とは根本的に異なるところです。
よく考えてみると、競馬などの公営ギャンブルの目的が地方財政の改善目的にあるわけですから、運営主体(=胴元)が損をしない仕組みになっていることは簡単に読み取ることができます(実際には、多くの運営主体は慢性的な赤字に苦しんでいます。)。
このことさえ分かっていれば、「競馬で一攫千金」とか「競馬の損は競馬で取り戻す」ということにはならないと思いますが、なかなか難しい。
こういう考え方に至ってしまうのは、やはり競馬がギャンブルとして認知されていることが大きいと思います。競馬法1条の目的どおり、馬の改良増殖を目指して馬券を買っている人なんてほとんどいないでしょう。
競馬は法律で許されているものの、パチンコやカジノ同様、ギャンブルであることに変わりありません。
社会問題となっている依存症との関係では、公営ギャンブルとはいえどもあまりに射幸心を煽ることには問題があると思います。
依存症の問題やカジノの問題は別のコラムで書こうと思いますが、たまに買う馬券を外して悔しがっている人のために、競馬法23条の9という条文を紹介します。
都道府県は、その行う競馬の収益をもつて、畜産の振興、社会福祉の増進、医療の普及、教育文化の発展、スポーツの振興及び災害の復旧のための施策を行うのに必要な経費の財源に充てるよう努めるものとする。
馬券が外れても、災害の復旧に役立ったと思えば割り切れるのではないでしょうか。