最近、原野(げんや)商法の被害にあった方から相談を受ける機会が多くなっています。
原野商法というのは、不動産販売業者が、「近い将来周辺が開発されるので確実に値上がります」などと勧誘して、資産価値の極めて低い原野や山林を、不当に高値で、消費者に売りつける商法のことをいいます。
元々は、今から3~40年ほど前に流行った商法なのですが、当時売りつけられた原野や山林は、今も開発されていません。
つまり、「近い将来周辺が開発されるので確実に値上がります」というのは真っ赤なウソで、典型的な詐欺的商法の一つと言われています。
最近多いのは、過去に原野商法の被害にあった方や、原野を相続した方が被害にあう「二次被害」といわれるものです。
独立行政法人国民生活センターもホームページで度々注意喚起をしています。
この原野商法二次被害の手口としては
①別の投資被害の回復ができると言われて、原野を高額で売りつけられた(被害回復型)
②原野を買い取るというので契約書にサインをしたら、別の原野を高額で購入させられていた(交換型)
③土地が高く売れそうだと言われて測量を勧められ、高額の測量費用を支払わされた(費用請求型)
などが挙げられます。
多くの業者が、二束三文の原野や山林を、固定資産評価額の数十~数百倍もの金額で購入させていることや、取引に当たって十分な説明をしていないこと、そればかりか虚偽の説明をしていること、などからすると、詐欺取消(民法96条)や、消費者契約法上の各取消、公序良俗違反(民法90条)などを理由として契約の効力を否定し、返金を請求できる場合が多いといえます。
実際、土地の登記簿謄本を確認すると、同じ原野や山林が、短期間に繰り返し売買されていることが分かります。
また、似たような名前の業者が取引に関与していることも分かります。
このように、原野商法では、複数の業者が関与して、同じ原野や山林が繰り返し売買されていることも特徴です。
業者に返金を求めると、例外なく「ウチはまともな会社です。」「ほかの会社とは違います。」という答えが返ってきますが、最終的には返金に応じるというケースもあります。
ただし、業者と連絡が取れなくなり、全く返金されないというケースも少なくありません。
このような場合でも、土地の名義が残っていると固定資産税を払わなければならない上、次の詐欺被害のターゲットになってしまう可能性もあります。
そこで、裁判を起こして土地の所有名義を変更すること(錯誤を理由とする所有権移転登記の抹消)も、重要になってきます。
ほかにも、業者と連絡が取れなくなった事案で、取引に関与した宅地建物取引士を相手とする損害賠償請求訴訟を起こして、被害の一部回復を実現したこともあります(静岡地方裁判所平成31年1月30日判決)。
別の宅地建物取引士には破産されたこともありましたが…。
いずれにせよ、自らや家族の方が原野商法の被害にあわれたときには、迷わず弁護士に相談されることをお勧めします。